保護犬シェルターとは?その役割と重要性
「保護犬シェルター」という言葉を聞いたことありますか?
保護犬シェルターとは、捨てられた犬や虐待を受けた犬、飼い主が飼えなくなった犬などを保護し、安心して過ごせる場所を提供する施設です。また、それと同時に犬たちに新しい家族を見つけるための活動もしています。
犬たちの大切な命を守り、幸せな生活を提供すること、そして動物愛護の気持ちを広めていくためにも、保護犬シェルターは社会にとって欠かせない存在となっています。
と言っても、実は私もつい最近まで知りませんでした。
娘の夏休みの自由課題の付き添いで、動物愛護センターの説明会に参加した際に、私の方が保護施設やその仕組みなどに興味を持ち、何も知識がないところからとことん調べました。
この記事では、保護犬シェルターが具体的にどんな活動してるのか、他の施設と何が違うのかなど、私のように何も知識がなくてもわかりやすいように、保護犬シェルターの基礎知識を紹介していきます。
また、読者の皆さんがどのように関わっていけるのかもご紹介します。保護犬シェルターのことを知りたい方や、保護活動に興味がある方はぜひ最後までご覧ください!
1.保護犬シェルターの主な活動内容
保護犬シェルターは、犬たちの命を守り、新しい家族に出会うまで安心して暮らせる環境を提供する施設です。しかし、その活動内容は、単なる「保護」にとどまりません。
ここでは、保護犬シェルターの代表的な活動を5つの視点からご紹介します。
1-1 保護犬たちのケアと健康管理
保護犬シェルターでは、保護された犬たちに十分な食事と清潔な環境を提供します。また、健康状態をチェックし、病気や怪我の治療を行ったり、予防接種や去勢・避妊手術を受けさせたりします。安心して生活できる環境を整えることが保護された犬たちにとって、とても重要なことだからです。
これらのケアが行き届くことで、犬たちは新しい家族に出会う準備を整えられます。
1-2 里親探しの取り組みについて
シェルターは、犬たちが安心して暮らせる新しい家族を見つけるための活動を行っています。
犬たちにはそれぞれ異なる性格や背景があるため、適切な里親を選ぶプロセスが必要です。シェルターでは譲渡会の開催や面談・訪問などを通じて、犬の特徴と里親の生活環境が合致するかを確認します。また、トライアル期間を設けることで、犬と里親の双方が幸せに暮らせるかを慎重に判断しています。
このような取り組みは、犬たちが再び捨てられるリスクを減らし、里親と犬の絆を深める重要なステップです。シェルターは単に犬を渡すだけでなく、幸せな未来を築く架け橋となっています。
1-3 動物愛護の啓発活動と地域との関わり
動物愛護の重要性を広めるため、地域で啓発活動を行うシェルターもあります。適切な飼い方や虐待防止についての教育も行い、動物福祉の意識向上に努めています。
なぜなら、保護する以前に、保護される状態になる犬を減らすことを考えていく必要があるからです。
保護できる犬の数を増やしていくことも大事ですが、根本的な問題としては、保護される犬を減らすことが重要です。
1-4 ボランティア活動と参加方法
シェルターでは、多くのボランティアスタッフが協力して運営をサポートしています。
基本的に運営費は寄付や支援金によって賄われています。資金的な余裕があるシェルターは少ないため、犬の世話や散歩、清掃、里親とのマッチングサポートなど、ボランティアの活動は非常に重要な役割を担います。
また、ボランティア活動に参加することで、犬たちにとっても新しい出会いがあり、活動者自身も犬たちとの絆を深めることができます。特定の資格を保有していなくても問題なく参加できます。
参加希望や詳細を知りたい場合は、お近くのシェルターに問い合わせをしてみましょう。
1-5 支援・寄付の重要性と方法
保護犬シェルターを運営するには多くの費用がかかります。犬の食事、医療費、施設の維持などが必要であり、寄付、募金、支援金という善意によって活動ができています。
保護犬シェルターはその性質上、利益を出すことを目的とした活動ではないため、寄付や支援金に頼らざるを得ないのが現状です。
寄付を行いたい場合は、各シェルターのホームページに案内があるので、そちらに従って手続きを行います。会員登録して継続寄付ができたり、クラウドファンディングを利用しているシェルターもあります。また、お金だけではなく、フードやトイレシート、タオルなどの物資の寄付を受け付けているシェルターもあるので、力になりたい方は無理のない範囲で検討をしてみてください。
保護犬シェルターは、犬たちが新しい家族を見つけるまで、幸せな生活を送るための大切な場所です。シェルターを支援することで、動物たちが大切にされる社会づくりにも貢献できます。
認定NPO法人や公益社団法人など、税制優遇の対象となる団体に寄付する場合、所得税や住民税、相続税の控除の対象となる場合があるので、詳細が知りたい方は寄付先のシェルターにお問い合わせください。
保護犬シェルターは、犬たちの命を守るだけでなく、新しい未来を提供する重要な施設です。その活動は、犬たちのケアや里親探し、地域への啓発活動、ボランティアや寄付など多岐にわたっています。
2.保健所、愛護センター、保護施設、保護犬シェルターとの違い
シェルターの活動を紹介してきましたが、シェルター以外にも保護された犬が収容される施設があり、それぞれの施設の目的や果たす役割は異なります。
「保健所」「愛護センター」「保護施設」と呼ばれている施設は、シェルターと何が違うのかを説明していきます。
2-1 保健所の役割
保健所は都道府県や市区町村が運営する公的機関で、主に公衆衛生を目的とし、動物管理も行っています。
保健所は迷い犬や野良犬の捕獲、飼い主が見つからない動物の収容が行われます。
公衆衛生の観点から、動物の管理や監視を行い、新しい飼い主が見つからない場合、やむを得ず殺処分が行われることがあります。収容期間は、一般的には1週間程度です。
保健所は一般的に知られている名称ですが、動物のための施設ではなく、あくまでも公衆衛生が目的というところがポイントです。
2-2 動物愛護センターの役割
愛護センターは、動物の愛護や保護を目的とした施設で、都道府県や市区町村が運営する公的機関です。保健所の機能を兼ね備えつつも、譲渡活動や啓発活動にも力を入れています。
活動内容は、新しい飼い主を探すための譲渡会や、動物愛護に関するイベントを開催して教育や啓発活動を行います。
新しい飼い主が見つからない場合や、譲渡することが適切でないと判断された場合は、やむを得ず殺処分が行われることもあります。
譲渡が適切でない場合の具体例として、「治療見込みのない病気やケガ」「極端に攻撃性が高く人に危害を加える可能性が高い」などがあります。
愛護センターは、地域と密接に関わりながら、公衆衛生と動物福祉の両方に配慮した施設として機能しているのが特徴です。
2-3 保護施設の役割
保護施設は、呼び名が異なるだけでシェルターと同じ意味と考えて問題ありません。
捨てられたり、虐待を受けたりした犬や、保健所で殺処分対象になった犬を引き取って保護し、再度家族を見つけることを目的としています。多くは非営利団体やボランティアによって運営されています。
里親探しを積極的に行い、動物の命を守ることに力を入れています。
2-4 それぞれの施設とシェルターの違い
公的機関である保健所や愛護センターの職員は公務員であるのに対し、シェルターは非営利団体の運営となるためスタッフは民間人です。保健所や愛護センターで職員として働くためには、公務員になる必要があります。
また、公的機関である保健所や愛護センターは公金で運営しています。
シェルターも補助金や助成金の対象となることはありますが、寄付や支援金がなければ運営は難しくなるでしょう。
■主要なポイント
保健所
- 運営者:公的機関(都道府県や市区町村)
- 目的:公衆衛生を守るため、野良犬や迷い犬の管理・収容を行う
- 特徴:短期間の収容が原則で、新しい飼い主が見つからない場合は殺処分される場合がある
愛護センター
- 運営者:公的機関(都道府県や市区町村)
- 目的:動物愛護と保護の推進、公衆衛生の維持
- 特徴:保健所と同様の機能を持ちながら、譲渡会や啓発活動を実施
保護施設(=保護犬シェルター)
- 運営者:主に非営利団体やボランティア。寄付や支援金を中心に運営。
- 目的:虐待や放棄された犬を保護し、里親を探す。
- 特徴:犬のケアや健康管理、新しい家族とのマッチングを最優先に行う
このように、保健所、愛護センター、シェルターは、それぞれの目的、活動、運営方法が異なりますが、連携しながら犬の命を守る方法を模索しています。どの施設も、人間と犬の共生には欠かせない施設となります。
3.保護犬の里親になるための準備
保護犬の里親になりたい人が現れるのはとても素晴らしいことですが、誰でも里親になれるわけではありません。シェルターは、引き渡した犬が幸せに暮らせる環境なのかを確認し、二度と保護犬になることがないようにしなければなりません。
シェルターによって細かい基準は異なりますが、里親になるためには最低限の準備が必要となります。
3-1 生活環境の整備と考慮点
当たり前の話ですが、大前提としてペットが飼える住居でなければなりません。賃貸の場合、飼育許可が必要な場合があるので、事前に家主や管理会社に確認しておきましょう。
また、犬用の寝床や遊び場、トイレなどのスペースが必要です。犬種によって必要な広さは異なりますが、安心して過ごせる場所を確保することが大切です。
少し話が逸れますが、転勤が多かったり、子供が産まれる前の夫婦などは審査に通りにくいという口コミを見かけます。これは転勤先が犬を飼える環境ではなかったり、子供がアレルギーだった場合などが考えられるためです。審査には様々な要因がありますが、本質的には安定した飼育環境が求められているということです。
シェルターによって譲渡の審査基準が異なる場合があります。里親を希望される方は各シェルターに問い合わせてみましょう。
3-2 経済的な準備と費用について
犬の飼育費用は年間平均30万~40万円ほどと言われています。
エサ、トイレシート、トリミング、予防薬やワクチン注射、定期健診など、様々な費用がかかります。これに加え、万が一病気などにかかってしまうとさらに増えてしまいます。ペット保険などのサービスに加入していたとしても、経済的に余裕がないと、安心して犬を飼うことは難しくなるため、犬を迎える前にもう一度考えてみましょう。
3-3 里親としての心構え
保護犬の里親には、責任感と忍耐強さ、愛情を持って接する心構えが必要です。
これは犬を迎えるうえで一番大切なことです。
犬は長い間、あなたの家族の一員として過ごすことになります。そのため、犬の年齢や体調によっては思いがけない医療費や介護が必要になることもあるので、その点も考慮しておきましょう。
また、過去にトラウマを抱えている保護犬もいます。最初は不安や恐怖、攻撃的な行動を見せることもあります。根気強く、愛情を持って接することが必要です。
保護犬を迎えることについては、家族や同居人と十分に話し合い、お互いの理解と協力を得ることが重要です。全員が犬を迎えることに賛成し、協力できる体制を整えておくことが必須になります。
一つの命を預かるということは、とても大変なことです。
「可愛いから」「好きだから」という気持ちはとてもよくわかりますが、決して軽くない責任が伴うことの理解が必要となります。
3-4 里親になる手続
里親になるには、以下のような手続きをするのが一般的です。
- シェルターとの面談:生活環境や飼育方針について詳しく話し合います。
- 必要書類の提出:身分証明書や住居のペット飼育許可書(賃貸の場合)などを準備します。
- 譲渡費用の確認:一部のシェルターでは、譲渡費用がかかります。この費用は犬の医療費や運営費に充てられます。
- 試し飼育(トライアル期間):多くのシェルターでは、正式譲渡の前に1週間から1カ月の試し飼育期間を設けています。
これらの手続きは、犬と里親の双方が幸せに暮らせる環境を確認するために設けられています。
詳細は、各シェルターに直接お問い合わせください。
保護犬の里親になるというのは、とても素晴らしいことです。犬の命を救うだけでなく、
犬との生活がきっとあなたにもたくさんの幸せをもたらしてくれるでしょう。
ただ、そのためには、安定した生活環境や経済的な準備、そして何よりも「最後まで責任を持つ」という心構えがとても大事です。
4.保護犬シェルターを通じて考えたいこと
保護犬シェルターは、犬たちの命を救い、新しい未来を作るために欠かせない存在です。でも、現状を数字やデータで見てみると、シェルターの努力だけでは解決できない問題があることもわかります。ここでは、動物の引き取り数や殺処分数といった統計を通して、今の状況を振り返りながら、私たちにできることを一緒に考えてみましょう。
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html
動物の殺処分数は減少してきています。これはとても素晴らしいことです。
しかし、その背景には殺処分対象の保護動物を、シェルターが引き取っていることが大きく影響しています。もしシェルターがなかったとすると、殺処分数は引き取り数に大きく近づいてしまうことでしょう。
シェルターの活動はとても素晴らしいものですが、やはり限界があります。
殺処分ゼロを掲げて保護活動を活性化させることも大事なのですが、保護対象(引き取り数)になる動物自体を減らさなければ根本的な解決にはなりません。
保護対象になる動物も減少傾向ではありますが、数字としてはまだまだ多いのが現状です。
このような現状から、日本はペット後進国と言われています。
ペット先進国は動物に対する国民の意識が圧倒的に高く、動物に関わる法律やインフラが整備されています。日本も、ペット先進国の仲間入りするためにどうすれば良いか考えていきたいですね。
5.まとめ
保護犬シェルターについて、
第1章では、シェルターがどんな活動をしているかを詳しく解説しました。犬たちの健康管理や新しい家族探し、地域への啓発活動など、多岐にわたる取り組みが命を救っています。
第2章では、保健所や愛護センターなど、シェルター以外の施設との違いを比較しました。それぞれの役割が異なるものの、全てが犬たちの命を守るために連携していることがわかりましたね。
第3章では、里親になるために必要な準備についてお話ししました。生活環境の整備や経済的な準備、そして何よりも責任感が重要だということをお伝えしました。
第4章では、動物の引き取り数や殺処分数といった統計を通して、現状と課題を考えました。殺処分数は減少傾向にありますが、保護動物そのものを減らす取り組みが今後の課題です。
今後、もっとシェルターが社会にとって身近な存在になり、より多くの保護犬の里親が見つかることを願います。それと同時に、施設を拡大させる方向ではなく、「保護対象になる犬」自体を減らしていく意識も不可欠です。
ペット先進国になるためには、まだまだ多くの課題があります。その中で私たちができる第一歩として、保護犬シェルターの存在の認知拡大と、犬を迎えることの責任の重さについて、自分の身近な人と共有していくことだと思います。その小さな積み重ねがいつか大きな力になり、多くの命を救うことに繋がっていくでしょう。
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